大判例

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名古屋地方裁判所 昭和45年(手ワ)280号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実〕原告の支払いを求めて約束手形三通の振出人らんには「三愛・宇野耕教(被告)」と記載されている。被告は、右手形の振出人らんには、訴外「株式会社三愛」が表示されて居り、被告個人は表示されていないと反駁した。

〔判決理由〕<証拠>を綜合すると次の諸事実を認めることができる。即ち、

1 被告は訴外株式会社三愛(旧商号名神商事株式会社)を経営していた神谷秀勝(現在は右会社取締役)の中学、高校、大学時代の同級生であるが昭和四三年六月頃右名神商事株式会社が不渡手形を出して以後三年間右会社並にその役員名では当座取引ができなくなり営業上支障を来すようになつたところから、被告は右神谷の依頼により同会社の名義上の代表取締役に就任すること、而して代表取締役の実務は取締役神豊秀勝に一任すること、被告個人名義の当座預金を株式会社東海銀行代官町支店に開設し、右当座口による当座取引並に右当座口を支払場所とする被告名義の手形の発行を訴外会社代表者代理人神谷秀勝に一任することを承諾し、右承諾に基き以後右神谷において、株式会社東海銀行代官町支店に被告名義の当座預金を開設し、右当座取引に使用するため「名古屋市中区西瓦町五九番地(注・訴外会社の本店所在地である)三愛(注・訴外会社商号から株式会社名を除いたものである)宇野耕教」なる記名判及び「三愛取締役社長」と刻した印章を作成し、右神谷秀勝が右記名判並に印章を保管し、同人又はその部下の職員において右記名判並印章を使用して訴外会社の営業のために手形を発行していたこと。

2 原告は金融業をいとなむ右訴外会社の金主(スポンサー)として右訴外会社の割引した第三者発行の手形を再割引したところそれが不渡りとなつたので昭和四四年八月頃訴外会社の実権者で被告名義の手形発行の権限ある神谷秀勝と交渉の結果、右神谷の部下である訴外会社営業部長嶋ノ江某より原告主張通りの本件各手形(甲第一乃至第三号証)の交付を受けた。

ことが認められる。よつて右事実を綜合すれば甲第一乃至第三号証は何れも被告の機関(被告は訴外会社の代表取締役に迄なつているのだから単なる名義貸の関係とは認め難い)である訴外会社の機関である神谷秀勝又はその機関である嶋ノ江某により真正に作成されたものと認めるのが相当であり、右甲第一乃至第三号証によれば被告が原告主張の本件約束手形三通を原告に対し振出交付したことを認めるに足る、被告本人の供述のうち右認定に牴触する部分は前記認定に援用の諸証拠に照し措信し難く他にこれに反する証拠もない。

被告は本件各手形(甲第一乃至第三号証)振出人らんの表示方法は訴外「株式会社三愛代表取締役宇野耕教」を表示するとみられ被告宇野耕教個人を表示したものとは解し難いとして争つている。右甲第一乃至第三号証をみるに同号証各振出人らの記名判は第一行が小字で「名古屋市中区西瓦町五九番地」とあり、第二行が大字で「三愛」とあり、第三行が中字で「宇野耕教」となつている。又、丸印は「三愛取締役社長」と刻されている。右の表示方法は確かに「株式会社三愛」「有限会社三愛」「三愛株式会社」「三愛有限会社」等の「代表取締役宇野耕教」を不完全に表示すると解する余地があると思われるが、他面、会社名、代表者代理人の資格の正確な表示を欠く点からみて「三愛こと宇野耕教」個人を表示すると解する余地もないではない。右甲第一乃至第三号証各符箋、被告本人の供述の一部によれば、株式会社東海銀行代官町支店は甲第一乃至第三号証記載の如き表示方法により訴外会社の銀行取引停止処分後に被告個人と当座取引をなし、甲第一、第二号証も右被告個人が振出人として表示されていると解して(「取引なし」ではなく)「預金不足」の理由で支払拒絶したことを認め得るものであり、右の事実は甲第一乃至第三号証の如き表示方法が被告個人を客観的に表示するに足ることの一傍証というべきである。然らば本件各手形は何れも被告個人を表示するに足るものというべきである。(夏目仲次)

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